開発職から企画職へ。役割の変化で感じた「もやもや」を、仕事の進め方を整理して乗り越えた話
答えのない仕事に「手応え」を。抽象的なタスクを着実に前に進めるための、具体的な思考プロセス。

社会人2〜3年目の頃、開発案件に没頭していた時期は、明確な手応えと共に仕事に打ち込めていたと感じます。しかし、転職を経て役割が変わり、より大きな視点が求められるようになってから、ある種の戸惑いを覚えるようになりました。
キャリアへの意識は高まっているものの、以前のような熱量で仕事に向き合えない。私生活の変化なども重なり、とにかく全体的に、なんだか「もやもや」していました。
この記事では、その「もやもや」の正体を突き止め、私なりに見出した新しい仕事の進め方について、対話で深まった詳細なステップも含めて、思考の過程を整理してみたいと思います。
🤔「もやもや」の正体 ― 成果を測る「物差し」の変化
この感覚の根本原因は、仕事の性質が変わり、以前使っていた「頑張りを測る物差し」が通用しなくなったことでした。
開発の仕事では、こなしたタスクの数や実装した機能が、目に見える成果に直結していました。一方で、今の「ざっくりと大きな目線で考える」仕事は、結果に不確実性が伴うため、かけた時間や労力が必ずしも成果とリンクせず、手応えを実感しづらい状況にあるのだと気づきました。
この、アクションと成果の間の不確実性の中で、自分は一体どこに仕事の「ステップ」を置けば、確かな前進を感じられるのか。それが、今回の思考の出発点となりました。
💡 新しい仕事の進め方を見つけるまでの道のり
👥 1. 仕事の「宛先」を明確にする(ステークホルダーの特定)
この状況を打開する最初のステップは、仕事の「宛先」を明確にすることでした。つまり、プロジェクトの成功に不可欠な関係者(ステークホルダー)を具体的に洗い出し、その役割を整理することです。
- 意思決定者(承認する人)
- 協力者(情報をくれたり、共に作業する人)
- 情報共有先(進捗を伝えておくべき人)
誰に何を働きかけるべきかが明確になるだけで、漠然としていた思考の輪郭がはっきりしました。
さらに、DXプロジェクトなどを進める上では、現場部門のような主要な関係者を、単なる「協力者」ではなく、課題を解決すべき「顧客」であり、成功を共に創る「パートナー」であると捉えるマインドセットが、プロジェクトの質を大きく左右するという発見もありました。
🧩 2. 複雑な状況を整理する(サブプロジェクトという考え方)
実際の仕事では、「先行事例づくり」と「本格展開の予算承認」のように、複数のゴールが同時に動くことがあります。これらを一つの塊として捉えると、関係者も目的も混ざってしまい、身動きが取れなくなります。
そこで、それぞれをゴールと関係者が異なる、連携した「サブプロジェクト」として切り分ける、という考え方に至りました。例えば、「事例づくり」の主な関係者は現場の協力者ですが、「予算承認」の主な関係者は経営層や財務部門です。「事例づくり」の成功が、「予算承認」を得るための強力な説得材料になる、という繋がりを意識することが重要です。
✏️ 3. 「たたき台」で思考を動かす
次に取り組んだのが、思考プロセスの見直しです。当初、私は「十分に思考を重ねてからアウトプットを作るものだ」と考えていたため、思考がまとまるまで手が動かないという課題がありました。
しかし、発想を転換し、思考を深めるための「道具」として、まず不完全な「たたき台」を作ることにしたのです。人間の脳が一度に扱える情報には限界があるため、思考を書き出して可視化することで、初めて客観的なレビューや構造化が可能になります。このアプローチによって、考えながら手を動かし、手を動かしながら考えを深めるという、生産的なサイクルが生まれました。
🚀 私がたどり着いた、具体的な仕事の流れ
以上の試行錯誤を経て、現在の私は、以下のような具体的な流れで仕事を進めています。
- たたき台の作成
思考を可視化するため、体裁を問わずアイデアや情報を書き出すフェーズ。完璧を目指さず、まずは思考を外に出すことを目的とします。
- 思考の深化・構造化
書き出した内容を客観的にレビューし、論理の穴を見つけ、キーメッセージを磨き上げるフェーズ。自分なりの結論や仮説をここで構築します。
- 資料の清書
伝えるべき相手(ステークホルダー)と目的に合わせ、メッセージを最適化し、説明・合意形成のための資料を作成するフェーズ。相手の関心事に寄り添い、伝わる形に整えることが重要です。
- 合意形成
作成した資料を元に関係者と対話し、承認や協力を得てプロジェクトを次のステップへと前進させるフェーズ。これは一方的な説明ではなく、対話を通じて計画をより良くしていく機会でもあります。
このプロセス、特に2〜4は一度で終わることは稀で、何度も行き来することで、アウトプットの質と関係者の納得度が高まっていきます。
✨ さいごに
役割の変化による戸惑いは、自分自身の仕事の進め方を深く見直す良い機会となりました。
この「もやもや」と向き合ったことで、結果的に、どんな抽象的な仕事でも着実に前に進めるための、自分なりの方法論を見つけることができました。もし過去の私と同じように、仕事の抽象度が上がったことで悩んでいる方がいれば、この思考の整理が、何か一つでもヒントになれば幸いです。

りょう
いろいろなことを考えるエンジニア
